このすば|この悩めるアクシズ教徒と喫茶店を!【このファンストーリー】

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問題を抱えた訪問者


ダニエルとの苛烈な戦いも一段落し、 カズマ達は束の間の休息を味わっていたーー
 
カズマ:ふぅ…もうトロールの顔は見たくないな。
 
ダクネス:そうだな。大して責めてもこないし、物足りない。 私はもっとえげつない責めに苦を味わえるモンスターが希望だ。
 
アクア:せめて倒すと美味しいお肉が手に入るならいいんですけどー。 ほら、カエルみたいに。そろそろ新しいおつまみが欲しいわ!
 
カズマ:同じ苦労をしたはずなのに楽観的だな…。
 
めぐみん:爆裂魔法でこれだけ屠ったのです。 今後、私のことは『トロールスレイヤー』とでも呼んで下さい。
 
かずま:めぐみんも相変わらずか…。 普段なら激しくつっこむところだが。もう借金もなくなったんだし、しばらくはのんびりとーー
 

 
セシリー:ごきげんようアクア様。ごきげんよう皆さん!
 
カズマ:あー、嫌な予感がする…。
 
アクア:あら、セシリーじゃない。あなたがうちを訪ねてくるなんて珍しいわね。
 
セシリー:アクア様、今日は祈り入って相談があるのです。今この街のアクシズ教会がピンチなのです…!
 
めぐみん:新手の勧誘ですか?すみませんが、アクシズ教入信の勧誘なら間に合っていますよ?
 
セシリー:いえいえ、今日は本当に相談があって来たんです。もちろんタダでとは言わないわ!
 
報酬は…『美人プリーストと行く湯けむりの街アルカンレティア1泊2日旅行券』でい・か・が?
 
カズマ:うん、別にいらないかな。あの街疲れるし。
 
ダクネス:まあまあ。話くらいは聞こうじゃないか。あの街はいい街だ…エリス教徒の私にゴミを見るような目を向けて…はあっ!
 
カズマ:お前、興奮してるだろ?
 
ダクネス:してない!!
 
セシリー:相談というのは他でもありません。実は…この街のアクシズ教会が、雨漏りしているんです!! 老朽化した屋根に穴があいていまして修繕しようにもお金が…。このままではお祈りに来る信者が減ってしまいます!!
 
カズマ:おお、それはいいニュースだな。
 
めぐみん:この街も平和になりますね。
 
アクア:ちょっと!?うちの子達が大変なの、少しは気の毒に思ってよ!
 
カズマ:でも…なあ?
 
めぐみん:アクシズ教徒が大人しくなれば、エリス教の人達をはじめ、みんなが穏やかに暮らせるじゃないですか。
 
セシリー:ああ…憎きはエリス教の邪教徒達!今回の雨漏りも、きっと陰湿な裏工作を行った結果に違いないわ!
 
カズマ:うん、それってお前らがエリス教徒達にやってることだよな?
 
ダクネス:わ、私はアクシズ教徒達の振る舞いが嫌いではないがな。むしろ、ここより過激なアルカンレティアが恋しいくらいだ。
 
アクア:ねえセシリー…話をまとめると、要するに教会の修繕のためのお金が必要ってことかしら?
 
セシリー:さすがはアクア様、その通りです。
 
カズマ:言っておくけど俺は嫌だからな。第一、お前みたいな過激な集団に協力したところで、害はあってもメリットはなさそうだ。
 
セシリー:そんなことを言わずに!お金を貸してとは言いません。せめて少しだけお金を貸してください!!
 
めぐみん:…まあまあカズマ。ここは協力してあげてもいいのではないですか?
 
セシリー:あーん、さすがロリッ子!なんていい子なの!お姉さんとお風呂に入る?
 
めぐみん:結構です。あとロリっ子と呼ぶのはやめてください。
 
セシリー:わかりました…私も覚悟を決めます!今回は特別に、美人プリーストである私と添い寝する権利をーー
 
めぐみん:いりません。やっぱり協力しない方がいいかもしれませんね…。
 
セシリー:ああー!わかりました。わかりましたよめぐみんさん!これ以上多くは求めませんから協力お願いします!
 
では1度、街の教会にお越しください。私は先に行って待っていますから…それでは後ほど!
 
カズマ:まったく、せわしないやつだなセシリーは。
 
アクア:さあ、困ってるウチの子達のためにも、ひと肌脱ぐわよ!
 
ダクネス:ワタシはエリス教徒だが、いいのだろうか?
 
めぐみん:いいんじゃないですか?困っている時はお互い様のはずです。エリス教徒もアクシズ教徒も助け合えばいいと思います。
 
カズマ:…なあめぐみん、どうして協力するつもりになったんだ?てっきりアクシズ教には関わりたくないと思ってたのに。
 
めぐみん:実は、アクシズ教には1つ借りがあるのですよ。今回はその借りを返すにはいい機会だと思ったのです。
 
カズマ:へぇ、そうだったのか…その借りってーー
 
ゆんゆん:めぐみん!!
 
カズマ:のわっ!?
 
ゆんゆん:勝負よ!今日こそ決着をつけましょう!
 
めぐみん:おや、ゆんゆんでしたか…丁度いいところに来ましたね。 今からアクシズ教の教会で少しばかり手伝いをするのです。せっかくなのであなたも手伝ってください。
 
カズマ:おお、それは名案だ。今回は変人だらけのアクシズ教と関わるんだし、味方は多い方がいいもんな。
 
アクア:ちょっとカズマさん、訂正してちょうだい!うちは至って真面目な子ばっかりですからー!
 
ダクネス:アクシズ教の教会か。一体どんな侮蔑の言葉を浴びせられるのか、今から楽しみだ!
 
ゆんゆん:えっ?えっ?あのそうじゃなくって、私はめぐみんに勝負をーー
 
めぐみん:ほら、早く行きますよ。
 
ゆんゆん:わ、わかったから!そんなに引っ張らないでよ、めぐみーん!
 
半ば強引にゆんゆんを巻き込み、カズマ達は街のアクシズ教会へ向かったーー
 


 

アクシズ教会の修繕


セシリーの依頼を受け、カズマ達はアクセルのアクシズ教会へとやってきていたーー
 
カズマ:中に入ったのは初めてだけど…簡素というか質素というか。
 
めぐみん:確かに、エリス教会と比べると、幾分殺風景に見えますね。やはりアクシズ教はあまり人気がないのでしょう。
 
ダクネス:雨漏りしているのは天井のあの辺りか。素人では修繕も出来そうにないし、本職に頼むしかないか。
 
アクア:そうすると、やっぱりお金がかかるわよね?なんとかならないかしら?
 
カズマ:なんとかって、貸そうにも借金を返したばかりだからなぁ。
 
ゆんゆん:だったら、信者からお布施を貰うか…。もしくは教会を運営する別の収入源を手に入れるとか…。
 
セシリー:別の収入源…あっそれでしたら!
 
めぐみん:どうしたのですか、いきなり喫茶店に連れてきて。
 
セシリー:ふっふっふっ…一見何の変哲もない喫茶店に見えますが実はこのお店、アクシズ教の直営店なんですよ!
 
アクア:そうなの?お布施とは別の教会の収入源になるってわけね!
 
ゆんゆん:でも、お客さんが少ないような気がします。
 
カズマ:一応、ゼロではないけど…。
 
喫茶店の客A:もぐもぐ…かぁっ!なんて美味しい野菜炒めなんだ!やっぱ有機農法で育てたアクシズ教の無添加野菜はひと味違うな!
 
喫茶店の客B:見て、デザートのお皿!すっごくピカピカで清潔よ!やっぱりアクシズ教の洗剤はどんな汚れも落とすから安全ね!
 
カズマ:こいつら、絶対サクラだろ。他のテーブルのお客さんが引いてるぞ!
 
喫茶店の店員:お客様、ご注文はお決まりになられましたか?
 
ダクネス:あっ、私は客ではなく…。
 
喫茶店の店員:実は今、大変お得なキャンペーンをやっている最中でして。コーヒーを注文するとアクシズ教の入信書も貰えるんです!
 
ダクネス:ひ、必要ない!私はエリス教徒だ!
 
喫茶店の店員:なんと、そうでしたか。そうとは気づかず失礼致しました。
 
ダクネス:…アルカンレティアとは違い、随分あっさり引き下がるのだな。
 
喫茶店の店員:お待たせしましたお客様…こちら、エリス教徒の方限定でお出ししているサービスです。
 
ダクネス:このバケツに入った藁束…馬の餌ではないか!
 
喫茶店の店員:ぺっ!
 

 
ダクネス:くうぅっ…!これだ、この人間扱いされてない感じ…!まさかアクセルで味わえる日が来ようとはな!
 
カズマ:そのサービスで喜ぶの、お前だけだと思うぞ?
 
セシリー:エリス教徒対策もばっちりで、運営上問題はなさそうですね!一体どうして流行らないんでしょう…?
 
カズマ:問題だらけだからだよ!
 
よしみんな。教会の修繕費用を稼ぐためにも、この店の売り上げ倍増を目指すぞ!アクア、店の名物メニューが欲しい。お前が浄化した水を聖水として売り出そう。ついでに土産用としても販売するか。
 
アクア:アクシズ教の女神の聖水というわけね!任せなさい、大ヒットは約束されたようなものよ!
 
カズマ:ダクネスはビラ撒きを頼む。耐久性が高いお前に適任だ。
 
ダクネス:分かった、任せてくれ。
 
めぐみん:カズマ、私は何をすればいいですか?
 
カズマ:めぐみんはゆんゆんと一緒に接客を担当してくれ。
 
ゆんゆん:えっ、私も!?う~…上手く出来るかなぁ?
 
めぐみん:ゆんゆん、勝負しましょう。私よりも売り上げることができますか!?
 
ゆんゆん:い、言ったわね!その勝負、受けて立つわ!
 
セシリー:はいは~い、私も接客担当に立候補します!なんたって言い出しっぺだし、美人プリーストですし!
 
そして、接客の衣装は私が決めますから。いいですね?いいですよね!?はぁ、はぁ…!!
 
ゆんゆん:か、顔が近いです!わかりました、わかりましたからっ!!
 
セシリー:くっくっくっ、美少女2人に私好みの衣装を着せて…。この先が楽しみだわ。
 
めぐみん:お姉さん、心の声が漏れてますよ?
 
カズマ:強引な勧誘で客を怖がらせそうな気もするけど。まあめぐみんとゆんゆんもいるし大丈夫か。
 
よーし、俺はキッチン担当するからな。俺の国で人気の食い物を新たなメニューとして導入する!
 
あまり時間はかけられない。明日には開店出来るように頑張るぞ!
 


 

喫茶店の新装開店


教会の修繕費を稼ぐため、アクシズ教が運営する喫茶店を盛り上げるべく、カズマ達は行動を開始したーー
 
ダクネス:喫茶店がリニューアルオープン!クーポン券を配布しているので、是非来てほしい!
 
通行人:ん?もしかしてあのアクシズ教会の近くにある店かい?
 
ダクネス:ああ、明日から新装開店するのだ。新しいメニューをたくさん用意しているので是非来てくれ。
 
通行人:うーん、でもなあ…あそこはアクシズ教の息がかかってるっていうじゃないか。
 
ダクネス:そ、そういう噂もあるようだが、なかなか悪くない気分を味わえることは保障しよう。
 
通行人:本当かい?あの連中は強引な勧誘で有名だし、気軽に顔出していいのか…。
 
ダクネス:だからこそ気軽に顔を出すべきだ。そして気軽に顔を出したからこその洗礼もある!
 
私も石を投げられたり、馬の餌を出されたりと、数々の仕打ちを受けてきた…ああ、思い出すだけで体がうずく…!
 
通行人:…すみません!急用を思い出したのでこの辺で失礼します!
 
ダクネス:ああっ、ちょっと…勧誘はなかなか難しいな。
 
アクア:はぁー…ずっと水の浄化ばかりで疲れてきちゃったんですけど。ねえ、ちょっと休みましょうよ。
 
カズマ:オープンは明日なんだ。そう頻繁に休んでもいられないだろ?
 
アクア:ん?すんすん、すんすん…いい匂いがするわ!カズマさん、何を作ってるのかしら?
 
カズマ:焼きそばだよ。この前、海で作った時好評だったしな。
 
この世界の連中にとってソースは珍しい調味料…匂いも強烈だから客を呼ぶにはうってつけだろう?
 
アクア:確かに。こんな匂いがするお店なら入ってみたくなるものね!
 
カズマ:明日の開店に備えて1度作ってみたんだ。もぐもぐ…キャベツと青のりはもっと入れてもいいかもな。
 
アクア:私も私も!味見させてちょうだい!
 
カズマ:あと5ダース分の聖水を瓶詰したらな?
 
アクア:わかったわ!水の女神の力、なめないでちょうだい!
 
ゆんゆん:ねえめぐみん、私達本当にこんな格好しなきゃならないの?
 
めぐみん:今さら何をためらっているのですか。カズマー?着替えましたよー。
 

 
セシリー:じゃーん。美人プリーストから美人カフェ店員に変身ですよ、また幾多の男達を虜にしてしまうのね…私って罪なお・ん・な!
 
カズマ:へぇ…セシリーに任せたから不安だったけど、いいじゃないか。3人とも、見た目は悪くないし、これならきっと…。
 
ゆんゆん:私の制服、めぐみんに比べて少し窮屈のような…。
 
めぐみん:おい、暗に発育自慢するのはやめてもらおうか。
 
…しかしまあ、今回はお姉さんのためですしね。多少のことは目をつぶりましょう。
 
カズマ:さっき言ってた「借りがある」ってやつか。なあめぐみん、アクシズ教との間で昔何があったんだ?
 
めぐみん:…あれはまだ、私が仲間を探して紅魔の里を出たばかりの頃。アクセルの街を目指す途中でアルカンレティアに寄ったのです。
 
セシリー:今でもめぐみんさんに初めて出会った時のことは覚えていますよ。
 
凶暴なエリス教徒の連中から逃げ回っていた可哀想な私を、めぐみんさんが助けてくれたんですよね?
 
めぐみん:本当はエリス教徒に嫌がらせを続けるお姉さんが悪かったのですが、知らずにまんまと肩を持ってしまいました。
 
セシリー:もう、そんなこと言って。紅魔族の高い知性を活かして勧誘を手伝ってくれたじゃない。
 
カズマ:そんな悪事に手を染めていたのか。
 
めぐみん:あ、悪事だなんて…一宿一飯のお礼ですよ。あの頃はバイトを何度もクビになって、生活費もままならなかったですからね…生きるのに必死だったのです。
 
アクシズ教会にもお世話になる中で、変なおじさんにも出会いましたし…。
 
セシリー:変なおじさんではありません。アクシズ教の最高責任者ゼスタ様ですよ。
 
めぐみん:…そのゼスタ様が馬車代をくれたのですよ。そのおかげで、ようやくアクセルにたどり着くことが出来たのです。
 
アクア:ふーん…まさかめぐみんとアクシズ教の間に、そんな秘められた絆があったなんてね。
 
うちの子達って、教会の外の人達から煙たがられがちだけど、そういうところで隠しきれない心根の優しさが出てしまうのよね!
 
めぐみん:アクシズ教の最高責任者だけあって、頭のおかしさも最高レベルでしたが…。
 
カズマ:まあ、感謝はしてるんだろ?
 
めぐみん:それは、そうですね。でなければ手伝いなどしません。
 
カズマ:よし。喫茶店を盛り上げて教会の天井を直して、アクシズ教へ恩返しをしようぜ。
 
めぐみん:カズマ…。
 
カズマ:そしてセシリー。喫茶店の売り上げの3割はオレが手数料として貰うからな。
 
セシリー:ええ。修理費さえ残ればそれでいいわよ!
 
めぐみん:はぁ、ちゃっかりしてますね。
 


 

新装開店の当日


アクシズ教の喫茶店、新装開店当日の朝ーー
 
アクア:すごいわカズマ!まだ開店前なのに、もう結構お客さんが並び始めてるわ!
 
セシリー:ふっふっふ、こんなに金づる…もとい信者候補がたくさん!
 
めぐみん:お姉さん、勧誘のしすぎは気をつけてくださいね?
 
カズマ:予想以上の客だ。ダクネスのビラ配りのおかげだな!
 
ダクネス:私はただ、長い時間をかけて粘り強く配り続けただけだ。
 
ただ、アクシズ教関連のビラだというだけで…、配ってる私への誹謗も多くてな。「アクシズ教の人でなし」だの「エリス教徒の裏切り者」だの、さんざん非難を浴びて、時には石さえ投げつけられたものだ…。
 
ゆんゆん:ダクネスさんがそんなに苦しい目に遭っていたなんて、途中でやめてもよかったのに…。
 
ダクネス:そんなもったいないことが出来るか!カズマ、私をビラ配り担当にしてくれてありがとう。
 
カズマ:あ、あぁ喜んでもらえたのなら何よりだ。
 
セシリー:皆さん、そろそろ開店のお時間ですよ!さあ準備はいいですか?それじゃお店を開けますよ…!
 
カズマ:ふっふっふっふ…順調順調♪
 
アクア:カズマさん、ここまでの売上はおいくらかしら?
 
カズマ:細かくは計算してないけどかなりいいぞ。予想以上だ!
 
アクアに浄化させた聖水だけは苦戦してるが、原価がタダ同然だし、たいした問題じゃないな。
 
客:うまかったよ。ごちそうさん。
 
めぐみん:ありがとうございました!
 
ゆんゆん:ま、またよろしくお願いしますっ。
 
カズマ:人気の理由はいくつか考えられるが、あの2人の存在が大きいな。
 
ダクネス:ああ、「可愛いウェイトレスがいる」と話題になっているようだ。
 
カズマ:めぐみんもゆんゆんも黙ってれば美少女だし。制服との相乗効果は抜群だ!
 
めぐみん:カズマ―、ちょっと疲れてしまいました。気分転換に撃ってきてもいいでしょうか?
 
慣れない接客で溜まった疲れを吹き飛ばす一発!スカッとする息抜きですよ!!
 
カズマ:頼むから仕事が終わってからにしてくれ。お前、爆裂魔法撃った後は使い物にならないだろ。
 
ゆんゆん:あ…い、いらっしゃいませ!
 
冒険者:よう!可愛いウェイトレスがいるって聞いて立ち寄ってみたんだが。
 
セシリー:それはきっと私のことですね!お兄さん、こんな麗しいお姉さんに接着してもらえるなんて幸せ者ですね!
 
冒険者:お、おう…噂に違わず確かにイケてる姉ちゃんだぜ。どっちかって言うと可愛いっていうより美人系ではあるが…。
 
セシリー:ささ、こちらへ。お客様をお席にご案内~。いらっしゃいませ~!はいどうぞ。メニューになります。どれになさいますか?私のおすすめはところてんスライムグレープ味ですよ?
 
冒険者:甘いもんは好きじゃねぇ。そうだなあ、じゃあこっちの…ん?入信セット…?
 

 
セシリー:ああああお客様大変お目が高い!入信ですね!?はい、名案ですよ!早速入信書をお渡ししますね!
 
冒険者:え!?いや、違ーー
 
セシリー:はいどうぞ!ここですここです、ここに名前を書くだけでいいんです!よかったですねぇー!今ならところてんスライムグレープ味も無料進呈ですよ!
 
冒険者:だから、えっとーー
 
セシリー:さあ!さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ!!
 
冒険者:…こ、こんな店!2度と来るかぁー!!
 
セシリー:ああっ!お客様ぁぁぁぁ!!…さてはお姉さんが美人すぎて恥ずかしくなっちゃったのね。ざーんねん!
 
カズマ:どれだけポジティブなんだよ!だから勧誘はやめろって言っただろ!!
 
その夜ーー
 
強引な勧誘をやめないセシリーに足を引っ張られながらも、喫茶店の客足は絶えなかった。
 
ゆんゆん:カズマさん、焼きそば2つお願い!紅ショウガ多めで!!
 
カズマ:あいよー!
 
男性客:…この焼きそばとか言うメニュー、かなりイケるぞ!
 
女性客:ほんとね!濃いめの味つけがクセになっていくらでも食べられそうだわ!
 
ダクネス:すごいな、大評判じゃないか!
 
カズマ:ああ。前日から準備してた甲斐があったな。
 
アクア:いけるわ…今日の売り上げを今後も維持出来れば、天井の修繕どころが豪華な教会に建て直すことすら可能よ!!
 
セシリー:あとはこのお客さん達をどうやって効率よく入信に導くかですね。みんなで知恵を出し合いましょう。
 
カズマ:お前は本当に懲りないな…。悪い噂が広がったら元の不人気店に逆戻りだからな!?
 
アクア:このまま何事もなく終わればいいわね!
 
カズマ:ちょ、おま、びっくりするからいきなり不吉なフラブぶっ込んでくるのやめてもらえますかね…?
 
そう言いつつも「今回は事件なんて起こらないだろう」とカズマは信じ、そして裏切られることとなるのだったーー
 


 

トラブルの種


初日は好調な滑り出しとなった喫茶店だったが、数日後ーー
 
カズマ:うーん…初日に比べてびっくりするくらい客が激減しているな。
 
ゆんゆん:ご、ごめんなさい!精一杯頑張ったんですけど…。やっぱり接客なんて私には荷が重かったんです。すみません!
 
カズマ:待て待て!どう考えてもゆんゆんのせいじゃない!
 
くそ、ちょっとでも楽観的に構えた俺が迂闊だった…!
 
客A:注文お願いしまーす。
 
ゆんゆん:はい、ただいま伺いますー!
 
客B:店員さん、こっちにもコーヒーを。
 
カズマ:はーい。少々お待ちを!
 
カズマ:…めぐみん、そろそろいけるか?
 
めぐみん:無理です、さっき爆裂魔法を撃ったばかりなので。もうこれ以上、一歩も動けません…。
 
カズマ:どうして撃った!?爆裂魔法は仕事が終わったからって言っただろ!?
 
めぐみん:仕方がなかったのですよ。昨日は1日働き詰めで、ストレスが溜まってしまったのです。
 
客B:店員さーん、コーヒーまだですかー!?
 
めぐみん:カズマ…おんぶして運んでくれたらコーヒーを出しますよ?
 
カズマ:それなら俺が出した方が早いだろ。
 
客C:やめろぉぉぉ!絶対に嫌だぁぁぁ!
 
カズマ:なんだなんだ!?
 
セシリー:お客様、困ります。当店の決まり事なのですよ?守っていただかないとお食事をお出しすることは出来ません。
 
客C:なあそんな意地悪言わないでくれよ。腹ペコなんだよ!金は払うから、とっととその焼きそばを俺にくれ!
 
セシリー:意地悪だなんて滅相もありません!私はただ、お召し上がりの前にお決まりの一言を復唱してほしいだけ…。
 
魔法の言葉を唱えれば、焼きそばはあなたのものです!さあご一緒に!「エリスの胸はパッド入り」…はい♪
 
客C:エ、エリスの胸は…ダメだ、言えねえ!エリス様を冒涜することなんて絶対に出来ねえ!!
 
セシリー:…逃げ出すなんて。きっとエリス教徒ね。アクア様、私また邪教徒を1人あぶり出しました!
 
カズマ:セシリー!エリス教徒への嫌がらせはやめろって言っただろ!?
 
ダクネス:カズマ!助けてくれ!
 
カズマ:今度はなんだ!?
 
ダクネス:ビラを撒きながらアクシズ教徒達の嫌がらせの素晴らしさについて説いていたら、警察が事情聴取にーー
 
警察:ああ、君がこの子の雇い主かい?困るんだよねー。過激なプレイありきの店は、街の風紀を乱しかねない。
 
カズマ:誤解です!当店はどこにでもある至って健全なカフェです!
 
客B:おい、いつまで待たせるんだー?食後のコーヒーを持ってきてくれ!!
 
カズマ:お待たせしてすみません!アクア、手が空いてるなら任せていいか?
 
アクア:わかったわ!大変お待たせしました。自慢の豆を引いて作った特製のコーヒーです。
 
客B:ありがとう…うーん、水!これコーヒーじゃなくて水!!
 
カズマ:あいつ、また浄化しやがった!!
 
客B:散々待たせてこれかよ…帰る!金は払わないからな!!
 
カズマ:ちくしょう!この店はもう終わりだ!
 
アナウンス:《緊張警報!緊張警報!》
 

 
ゆんゆん:え、このアナウンスは…。
 
アナウンス:《北の方角にアンデッドの群れが現れました!現在アクセルの街に向けて南下中!冒険者の皆さんは武器を持って正門前にお集まりください!》
 
カズマ:ああもう、こんな時に!
 
アンデッド達:ウォォォォォォ…!
 
めぐみん:ふはははは…我らが来たからには、アンデッド風情が街に入ることが叶うとは思わないことですね。
 
ゆんゆん:ちょっとめぐみん、落ちちゃうから暴れないで…。
 
カズマ:…おんぶされながらカッコつけても説得力ないぞ?
 
アンデッド達:ウォォォォォォ…!
 
アクア:えっ、ちょっと、どうして私のとこばっか来るの!?待ってよ、ねえ!!いやあああああ!助けてーカズマさぁーん!!
 
セシリー:アクア様!ああっ、集団でアクア様に襲いかかるなんて!きっと生前はエリス教徒の邪教徒だったに違いないわ!
 
アンデッド達:ウォォォォォォ…!
 
ダクネス:待っていろ、すぐ助けてやる!!
 


 

教会の修繕を実現することが出来るのか?


ゆんゆん:『ライトオブセイバー』ッッッ!!
 
突如としてアクセルの街に押し寄せたアンデッドの群れを迎え撃つカズマ達だったがーー
 
アンデッド達:ウォォォォォォ…!
 
カズマ:ちくしょう、まだこんなに…倒しても倒してもキリがないな!
 
ダクネス:私に任せろ…さあ遠慮はいらない、かかってこい!その汚らわしい体を揺らして私に群がってこい!
 
カズマ:よせ、このバカ!こんだけの数に襲われたら、ダクネスでもさすがに無理だろ…!
 
アクア:私に任せて!セイクリッドハイネーーいやああああ!?
 
アンデッド達:ウォォォォォォ…!
 
アクア:ちょっと来ないでよ!今詠唱してるの!終わるまで待ってあああああ…カズマさん助けてぇぇ!
 
カズマ:おま、さっきも同じことやってたろ!?ちょっとは学習しろよ!?
 
セシリー:忌まわしいアンデッド達、これでも食らいなさい!
 
アンデッド達:ホェェェェ…!
 
冒険者A:おお!水をかけただけでアンデッドが消滅したぞ!?あの人は何者なんだ!?
 
冒険者B:あれは喫茶店のウェイトレスのお姉さんだよ!きっとあの瓶の中の水に秘密があるんだ!
 
冒険者C:なあ、あの瓶、例の喫茶店で売ってた聖水じゃないか?
 
セシリー:フッフッフ…。これは水の女神の祝福を受けたありがたい聖水ですよ!!
 
カズマ:おお、用意したけど全然売れてなかったあれか…!
 
セシリー:ええ、売れ残っていたのはこの時のためだったのよ!さすがはアクア様!
 
ダクネス:ああ、アンデッドにもみくちゃにされるとは…。あんというシチュエーション!!
 
カズマ:よし、みんな!聖水をぶっかけろ!ドレインタッチで魔力を分けてやったしめぐみんもこれくらいなら出来るだろ?
 
めぐみん:いいでしょう…。生と死の狭間を彷徨う者達よ、冥府に還るがいい!
 
セシリー:アクシズ教の聖水に感謝しなさい…それっ!
 
アンデッド達:ホェェェェ…!
 
冒険者A:おお、すいい勢いで消滅していくぞ!
 
冒険者B:すごい!冒険のお供に欲しいくらいだ!!
 
カズマ:今だアクア!追っては片付けたし、とどめは頼んだぞ!!
 
アクア:ぜぇ、ぜぇ…まったく。アンデッドの分際でこの女神を追っかけ回すなんて生意気よ!
 
成仏しなさい!『セイクリッドハイネスエクソシズム』ッッッ!!
 

 
アンデッド達:ホェェェェ…!
 
アクア:からの…『ゴッドレクイエム』ゥゥゥ!!!
 
セシリー:今回は本当にありがとうございまし。皆さんのおかげで教会は潰れずに済みそうです。
 
カズマ:一時はマジでどうなるかと思ったが…一件落着だな。そしてあの聖水が、まさかここにきて人気になるなんて。
 
アクア:あの襲撃がきっかけで「アンデッドに襲われた時のために」って口コミが広がったみたいよ?
 
そういう意味では、アンデッドの襲来も悪くはなかったかもね。
 
ダクネス:私も今回は十分堪能した。あれほどのアンデッド達に囲まれるのは初めての経験だったからな…。
 
めぐみん:私もアクシズ教への借りを返すことが出来てよかったですよ。
 
セシリー:手数料は3割でしたよね?これだけ協力してもらったので、少し色をつけさせてもらいました。
 
カズマ:おお!
 
セシリー:はいどうぞ。手数料3割と…。アクシズ教のありがたい商品を掲載した商品カタログです!
 
石鹸、洗剤、鍋に健康食品、あなたの生活を完全網羅!今回は感謝を込めて、特別に教徒価格の半額でーー
 
カズマ:フンッ!!!
 
セシリー:ああっ、酷いわ!せっかくのカタログを!!
 
ゆんゆん:あの、ちょっといいですか?私も手伝ったので、お願いを聞いてほしいというか…。
 
めぐみん:お願い?
 
ゆんゆん:えっとね、その…誰かとカフェでお茶をするのが夢だったの!めぐみん!一緒にお茶しましょう!!
 
アクア:なんだか、悲しいお願いね…。
 
カズマ:それくらい、いいんじゃないか?めぐみん。
 
めぐみん:はぁ…わかりました。お茶をすればいいんですね?
 
ゆんゆん:あ、ありがとーー
 
めぐみん:ごくごくごくごく!!
 
ゆんゆん:ああっ!は、速すぎよ!!
 
めぐみん:ぷはっ…さて、お茶も飲み終わりましたし、そろそろ帰りますか。
 
ゆんゆん:うぅぅ、お友達と一緒にお茶したかったのに…。
 
めぐみん:…それくらい、また付き合ってあげますよ。
 
ゆんゆん:めぐみん…ほ、ほんとに…?
 
めぐみん:当たり前じゃないですか。私達は友達でしょう?それでは、先に帰りますのでお会計はお願いします。
 
ゆんゆん:えっ…?お会計…?
 
セシリー:もう従業員ではありませんし、無銭飲食はダメですよ?お支払いよろしくお願いします。
 
聖水の収益で教会はすぐに修繕が完了し、アクアの聖水も土産用として以後も販売されることとなったーー

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