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その日。マグロの収穫クエストから帰ってきたカズマ達は、お通夜のように落ち込んでいたーー
 

 
カズマ:0点だよ。 
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めぐみん:はぁ!?少なく見積もっても120点でしたよ、今日の爆裂は!
 
カズマ:多く見積もっても0点なんだよ!モンスターにマグロ横取りされそうになったからって爆裂魔法撃ち込みやがって!マグロごと吹っ飛んだら意味ないだろ!?いい加減、他に使い勝手のいい上級魔法を覚えろよ!
 
ダクネス:カズマ、仲間に言い過ぎだぞ。
 
アクア:ねえ、借金また増えちゃったんじゃない?どうすんのよ?もうバイトはイヤなのぉ~!!
 
カズマ:はぁ…いつもこいつらに振り回されて。アニメやゲームの主人公ならそろそろモテモテになってもいい頃なのに…!
 
ゆんゆん:めぐみん!ねえめぐみんいる!?そして、カズマさんも!
このすば紅伝説画像③
 
カズマ:お、ゆんゆん。どうしたんだ、そんな剣幕で駆け込んで来るなんて。
 
めぐみ:カ…カズマさん…っ!私…わ、私!!カズマさんの子供が欲しい!!
 
カズマ:…モテ期、入りました!
 
ゆんゆん:お父さんから手紙が届いたの…。
 
めぐみん:…これですか。「この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう」どうやら紅魔の里が魔王軍の幹部に襲われているようです。もう1枚ありますね。
 
「占い師が里の壊滅という絶望の未来を視た日。同時に希望の光も視る。それは紅魔族唯一の生き残り、ゆんゆん」
 
「やがて駆け出しの街で、ある男と出会うことになる。頼りなく、何の力もないその男こそが彼女の伴侶となる相手であった」
 
カズマ:…おい、なんでみんなで俺を見るんだよ。ゆんゆんもそれだけの情報で俺のとこに来たのか?
 
めぐみん:「そして月日は流れ、その男との間に生まれた少年は旅に出る。少年こそが、一族の敵である魔王を倒す者であった…」
 
ゆんゆん:つまり、族長の娘である私がカズマさんと子供を作らないと世界が大変なことになっちゃうんです…!
 
カズマ:俺達の子供が魔王を…わかった!そういうことなら任せとけ。世界のためだ、仕方がない!!
 
ダクネス:お、お前というやつは!普段は優柔不断なクセに、今日はどうしてそんなに男らしいのだ!?
 
めぐみん:待ってください。まだ続きが…。「紅魔族英雄伝第1章。著者あるえ」と…。
 
ゆんゆん:あるえが書いてたの!?あるえのバカァ~!!信じちゃったじゃない!!
 
アクア:…ねえ、どいういうこと?
 
めぐみん:あるえは、作家を目指している里の同級生なのです。
 
ダクネス:なんだ、ただの作り話か…。
 
ゆんゆん:ねえ、めぐみん。紅魔の里に一緒に行くわよね!?心配よね!?
 
めぐみん:里のみんながそうやすやすと負けるわけないじゃないですか。大丈夫ですよ。
 
ゆんゆん:そんなぁ…いいわ、私だけでも行くんだから!
 
カズマ:めぐみん、どうするんだ?
 
めぐみん:…里に危険が迫っているのは本当みたいですし仕方ありません。向かいます…別にゆんゆんの為じゃないですからね!
 
わずかな期待を胸に、カズマ達は紅魔の里へ向かう。しかし、その当然その期待は打ち壊されることとなるのだったーー
 

 


カズマ:イヤァァァァァ!! 

 

オークA:ちょっと、お待ちなさいよぉ! 

 
オークB:ねぇ、男前なお兄さん!あたし達といいことしない?
 
カズマ:なんで女オークばっかりなんだ!?そしてなんで俺ばっかり追ってくるんだー!?
 
めぐみん:オークのオスはとっくの昔に絶滅しました!オークのメスは、他種族のオスを捕らえてすごい目に遭わせるという男性にとっての天敵です!!
 
オークC:2、3日ウチの集落に来て!ハーレムよ?この世の天国を味わわせてあげる!!
 
カズマ:お断りしまーす!!帰りたい!もう家に帰りたーい…のわっ!?
 
オークA:フフフ、捕まえた…ピチピチの16歳、スワティナーゼです!さあ、あんたの下半身にも自己紹介してもらおうか!!
 
カズマ:ウチの息子はシャイなんで出せません!誰かー!た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!
 
ゆんゆん:『ボトムレス・スワンプ』ッ!

 
オーク達!このまま沼に引きずり込まれたくなければ今すぐ立ち去りなさい!!
 
ゆんゆんが啖呵を切ると、オーク達は蜘蛛の子を散らすように方々へと逃げていったーー
 
カズマ:ゆ…ゆんゆーん!うっうわぁぁぁ~!!怖かったよお、ありがとう、ありがとうゆんゆん…ブーッ!!
 
ゆんゆん:あああっ、人のローブで鼻をかまないでぇぇ!!
 
アクア:よしよし、怖かったのねカズマ。もう大丈夫、大丈夫。
 
めぐみん:はぁ、いい加減泣き止んでください。
 
ダクネス:しっ、静かに…何者かが近づいて来るっ!?
 
ゴブリン:へっへっへ…騒がしいと思ったら。紅魔族のガキ2人と冒険者風の人間共か。
 
ゴブリンエリート:見逃す手はねえな。こいつらの首をあの方への手土産にしよう。

 
めぐみん:笑止!どこぞの手下などに後れを取るわけがありません!この私の力、見せてあげましょう!
 
カズマ:待て、めぐみん!敵の数もわからないんだ、爆裂魔法は温存しとーー
 
めぐみん:『エクスプロージョン』ッッッ!!! 

 
ゴブリン達:ぎゃあああああああああああああああ!!!!
 
めぐみん:どうですカズマ!今の爆裂魔法は何点ですか!
 
カズマ:マイナス90点をくれてやる!敵がいるのに、いきなり魔力使い果たしやがって!どうすんだ!
 
紅魔の里への道のりは、前途多難だったーー
 
 カズマ達が紅魔の里へ向かっていた頃。アクセルの街ではーー

 

うーむ…うぅぅぅむ…。

ウィズ:バニルさん、さっきから何を唸っているのですか?
 
バニル:貧弱冒険者との契約の件だ。開発した商品の知的財産権を総額3億エリスで買い取る話しだが…。まだ肝心の商品を作る職人が決まっておらん。それが決まらぬ限り、契約成立とはいかぬのだ。
 
ウィズ:それは困りましたね。カズマさん達は紅魔の里へ行ってしまいましたし…あれ?そういえば、紅魔の里に…。


『危険が迫っている』と聞いてやってきた紅魔の里では、別の意味でカズマ達の想像を絶する光景が広がっていたーー

 
魔王軍のゴブリン達:ぎゃぁぁぁぁあ!!
 
ゴブリンA:畜生。近づくことすら出来ないとは…!シルビア様、撤退を!どうかあなた様だけでも撤退をー!!
 
ゴブリンB:だから紅魔の里を攻めるのは反対したんだ!だから俺は行きたくないって…!!
 
ノリノリで魔法を撃ちまくる紅魔族達。放たれた稲妻は、次々とゴブリン達を貫き、吹き飛ばしていくーー
 

 
ダクネス:竜巻に、稲妻に、氷塊に…。ありとあらゆる魔法が飛び交じっていてすごい光景だな。
 
アクア:この里の危機って聞いてわざわざ来たのに。全然平気じゃないの。
 
族長:はっはっはっ!手紙のことかい?あれはただの近況報告だよ。筆がノッてしまってな!
 
ゆんゆん:で、でもお父さん…。「手紙が届く頃にはきっと私はこの世にいないだろう」って…
 
族長:紅魔族のいつもの挨拶じゃないか。
 
カズマ:…ゆんゆん、お前の親父さん一発殴っていいか?
 
ゆんゆん:いいですよ。
 
めぐみん:せっかく里まで来たのですから、今日は私の家に泊まって明日、里を観光しましょう…さあ着きました。

 
 こめっこ:…。

 
カズマ:お、めぐみんの妹か?
 
ダクネス:ふふっ、随分とかわいらしい子だな。
 
めぐみん:こめっこ、ただいま帰りましたよ。
 
こめっこ:すぅぅぅ…おとうさーん!!姉ちゃんが男ひっかけて帰ってきたーー!
 
カズマ:ちょっとお嬢ちゃん!お兄さんと話をしようっ!
 
ひょいざぶろー:あー…ゴホンっ!で、キミはウチの娘とどういう関係なんだね?

 
カズマ:だから、何度も言いますがただの友人でーー
 
ひょいざぶろー:なあああああああああああ!!
 
ゆいゆい:あなたあああ!!やめて、ちゃぶ台をひっくり返して壊すのはもうやめて!お金がないのよぉぉ~!!
 
ひょいざぶろー:…失礼、取り乱した。キミが白々しくもただの友人だなどと抜かすものだからね。
 
ゆいゆい:いい人そうじゃありませんか。ただ…せめて借金を返されてからウチの娘と一緒になられては?
 
カズマ:はぁ!?なんの話してるんですか!ただの友人だって言ってるでしょうが!!
 
ゆいゆい:でも娘からの手紙には、全身ヌルヌルの姿にして楽しんだり。おんぶしながら胸の感触を確かめたり一緒にお風呂に入ったりーー
 
カズマ:申し訳ございません!!!
 
ひょいざぶろー:…それでも大切な仲間だからと。
 
カズマ:え?
 
ひょいざぶろー:借金まみれでスケベで暴言ばかりの常識のない男でも、私が目を離すと簡単に死ぬから…と。
 
カズマ:引っかかるところもあるが、大切な仲間だからというのは少しだけ嬉しい…。
 
ゆいゆい:娘のパーティーのことですから、助けてあげたい気持ちはやまやまなのですけど…
 
カズマ:あ、大丈夫です。実はもうすぐ大金が入ってくる予定でして。
 
ひょいざぶろー:ほう…ちなみにおいくらほど?
 
カズマ:3億エリスですかね。
 
ひょいざぶろー&ゆいゆい:3億!?
 
カズマ:…バニルとの取引で提示された額がそれ位だけど、ちょっと余計なこと言っちゃったか?
 
ひょいざぶろー:カズマさん、今日はうちに泊まっていきなさい!遠慮なんかしなくていいんだよ!
 
ゆいゆい:ええ、それがいいわ。冒険者なんてやってるなら、家もないでしょうし…。
 
カズマ:い、いえ。アクセルの街に屋敷を持っているので…。
 
ひょいざぶろー&ゆいゆい:屋敷!?
 
 カズマ:3億と屋敷の話しをした途端、待遇がよくなったな…。

 
散々おもてなしをされ。1番風呂をいただいたカズマが居間に戻ると、ゆいゆいとダクネスの言い争いが耳に入った。
 
ダクネス:何をバカなことを!自分の娘が可愛くないのか!!
 
ゆいゆい:大丈夫ですよ。娘はもう結婚できる年齢ですし、カズマさんも分別ある大人…もし何かあったとしてもそれは…。
 
ダクネス:あなたは何を言ってーー
 
ゆいゆい:『スリープ』…。
 
ダクネス:ふぁ…。
 
カズマ:やりやがった!よく見りゃみんなも眠ってるし。まさかこのお母さんが…!?
 
ゆいゆい:あらカズマさん。みんな寝てしまいましたので、娘を部屋へ運ぶのを手伝っていただけませんか?
 
めぐみん:すー…すー…。

 
ゆいゆい:ではごゆっくり…。『ロック』!!
 
カズマ:部屋に娘と男を閉じ込めやがったー!これから入ってくる金の額を口走った俺も大概だが。あの奥さんもどうなのか…。
 
…待てよ?邪魔しそうなやつは既に眠っているし、部屋には誰も出入りできない。これはなんという据え膳!
 
寝息を立てるめぐみんの周りをぐるぐるしながら、カズマはこの夜をどう乗り切るか思案をめ巡らせるのだったーー
 

 めぐみん:すやすや…すー…。

部屋に魔法でカギをかけられ。カズマは眠っているめぐみんと2人きりになっていたーー
 

めぐみん:うーん…ん?
 
カズマ:おはようございます。よく眠れたかい?
 
めぐみん:どうしてカズマがっ!?ま、まさか寝ている私に何かしたのではありませんよね!?
 
カズマ:おい、俺が何かするようなやつだと思うのか?今まで何もなかったんだぞ?
 
めぐみん:そ、そうですよね。ちょっと混乱して…カズマはこんな時、何かをしてくるような人ではないですもんね。
 
カズマ:当然だ。そもそもお前の母ちゃんにカギをかけられて閉じ込められてるんだぞ?
 
めぐみん:まったく、あの人は、でも…。…本当に何もしてくれないのですか?せっかく2人きりなのに…?
 
カズマ:あれ?何かしてもいいのか?やはりモテ期が…!バカッ、せっかく2人きりなのに何もしないわけがないだろ!こっちは親御さんの許可までもらってるんだぞ!!
 
めぐみん:そんなことだろうと思いましたよ!今日はゆんゆんの家に泊めてもらいます!!
 
カズマ:ああっ!畜生、カマかけやがったなー!!
 
翌日。用事があると話すダクネスは別行動に、カズマ達は紅魔の里の観光を楽しんでいたーー
 

 
めぐみん:ここは、我ら紅魔族の『天敵』が封印されている謎施設です。凄いでしょう?

 
カズマ:うーん、外から見ただけじゃ凄いのかどうか全然分からん。
 
アクア:ねえめぐみん、他にも凄い物が眠ってる場所はないのかしら?
 
めぐみん:前は『邪神が封印された墓』や『名もなき女神が封印された土地』があったのですが、色々あった封印が解けてしまったのですよ。
 
カズマ:お前んとこの封印、ザルじゃねーか!!
 
めぐみん:さあて!次の場所へ行きますよ!

 
めぐみん:こんにちは!

 
ちぇけら:おや、めぐみん、帰ってきたのかい。ということは、そこの人達は里の外から…ごほん。
 
我が名はちぇけら!アークウィザードにして上級魔法を操る者!紅魔族随一の服屋の店主!!
 
カズマ:この里の人達は名乗らないと何かの病気にでもなってしまうのだろうか…?
 
めぐみん:ところで、実は今着ているローブの替えが欲しくてですね。これと同じ物、全部下さい。
 
ちぇけら:全部!?あのめぐみんが随分とブルジョアに…。
 
アクア:ねえねえカズマ。こっちに面白そうな物があるわよ。
 
カズマ:ん、なんだアクア…って、これ!?どう見てもライフルなんですけど…。
 

 
黒い鉄筒に引き金。どう見てもライフルにしか見えない物が、物干し竿として活用されていた。
 
ちぇけら:それはうちに代々伝わる由緒正しい物干し竿ですよ。錆びたりしないし、重宝しているんです。
 
カズマ:ライフルを物干し竿に…この里、どうなってんの?
 
めぐみん:おっと、そろそろ時間ですね。次はとっておきの場所に案内してあげます!

 
めぐみん:ようこそ!我が魔法学園『レッドプリズン』へ!!

 
ゆんゆん:よ、ようこそ…。
 
カズマ:どうして、ゆんゆんが?
 
めぐみん:昨日、泊まりに行ったらぼっちが寂しそうにしていたので誘っておいたのです。
 
アクア:へー、これめぐみん達の制服?可愛いわね!
 
めぐみん:由緒ある魔法学園を案内するのですから正装に着替えて当然なのです。
 
カズマ:懐かしくなってお前が着たくなっただけだろ。
 
アクア:カズマは学校のことになると途端に辛辣よね。馴染めなかった古傷が痛むのよね。
 
カズマ:おいやめろ、プライバシーの侵害だぞ!
 
???:フフフ…。
 
カズマ&アクア&めぐみん:ん!?
 
★★画像★★ あるえ:我が名はあるえ!紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指す者!!

 
ふにふら:我が名はふにふら!紅魔族随一の弟想いにして、ブラコンと呼ばれし者!!
 
どどんこ:我が名はどどんこ!紅魔族随一の…随一の…なんだっけ?
 
めぐみん:あるえ…それに、どどんことふにくら。
 
ふにふら:ふにふらよ!わざとね?わざと間違ってるんでしょ!?
 
アクア:ねえねえめぐみん…この人達、誰?
 
めぐみん:魔法学園時代の同級生達ですよ。
 
あるえ:おかえり、無事戻れたようで何よりだよ。
 
めぐみん:あるえ…うっかり信じてしまう人が出るので、あんな手紙はやめてくださいね?
 
ゆんゆん:ち、ちょっと!どうしてみんなで私のほうを見るの!?
 
赤面するゆんゆんをよそに、めぐみん達は思い出話に花を咲かせるのだったーー
 

 
久しぶりの再開を懐かしむように、めぐみん達の会話は弾んでいたーー
 
あるえ:ところで、ゆんゆんは里の外で上手くやっているのかい?

 
アクア:ゆんゆんはピンチの私達を助けてくれたことがあるわ。ぴかぴか光る剣みたいな魔法でモンスターをやっつけてくれたの!
 
どどんこ:それってライトオブセイバー?上級魔法よね?
 
ふにふら:あれ?ゆんゆんって中級魔法使いじゃなかった?
 
ゆんゆん:も、もうその話はいいから~!
 
カズマ:中級魔法使い?紅魔族なのに?
 
カズマ:うーん…ちょっといいか?ゆんゆんのことなんだけどさ。

 
めぐみん:さっきの話ですか?
 
カズマ:ああ。紅魔族って上級魔法を使うチート集団だと思ってたから、ゆんゆんが最初は中級魔法使いだったって聞いて意外でさ。
 
めぐみん:…実は、それには事情があるのです。私は学生の頃、爆裂魔法を覚えるためにスキルポイントを大事に大事に貯めていました。
 
ある時、こめっこが凶暴なモンスターに襲われて。ゆんゆんが咄嗟に中級魔法を習得して、こめっこを助けてくれたのです。
 
本当は上級魔法を習得するために貯めていたはずの自分のポイントを使って…。
 
カズマ:それって、めぐみんが爆裂魔法を習得出来るように庇ってくれたってことか?
 
めぐみん:別に…頼んだわけではないのですけどね。
 
アクア:ま、今じゃめぐみんよりも一級の魔法使いなわけだし。結果オーライよね!!
 
カズマ:そーだな…って何の音だ!?
 
魔王軍緊急クエスト!!

 


ダクネス:魔王軍め!私の目が黒いうちはここは通さん!!

 
シルビア:なんだこの女は!一体何がしたいんだ!!
 
ゴブリンA:シルビア様!コイツの目的が分かりません!お下がりを!
 
ゴブリンB:なんて邪魔な女だ!助けを呼びに行くわけでもなく、強力な攻撃をするわけでもない。
 
ダクネス:はぁ、はぁ、言っておくが私に生半可な攻撃は通じないぞ。幹部の名に恥じぬ卑劣な攻撃を仕掛けてこい…!
 

 
ダクネスは紅魔の里に攻め込もうとした魔王軍を見つけ、ただ1人立ちはだかっていたーー
 
カズマ:ダクネス、よく持ちこたえた!里の人達を呼んできたぞ!

 
ダクネス:カ、カズマ!?もう来てしまったのか。せめて魔王軍にもう少しいたぶられてから来てくれた方が…
 
カズマ:お前はちょっと黙ろうか。せっかくの活躍が台無しだからな!
 
シルビア:そう…仲間が来るまでの時間稼ぎだったのね。ここまで耐えた防御力からしてかなり高レベルのはずだけど…攻撃を当てなかったのも演技だったのかしら?
 
ダクネス:バ、バレてしまっては…仕方がない…かな…。
 
カズマ:シルビアとか言ったな。そこにいるクルセイダーは魔王軍幹部バニルと渡り合った猛者だ!
 
シルビア:バニルですって!?アクセルの街に行ったきり帰って来ないって聞いたけど・・・まさか、あなた達が?
 
カズマ:そう、このめぐみんがとどめを刺した。
 
めぐみん:…ふふん!!
 
ゴブリンA:あの、バニル様を…?
 
カズマ:それだけじゃない。ディラハンのベルディア!デッドリーポイズンスライムのハンス!
 
果ては機動要塞デストロイヤーに至るまで…!俺達4人が討ち取らせてもらった!!
 
アクア:あーあ、カズマさんったらまた見栄張っちゃって…。
 
シルビア:ふーん…見たところ、あなたがパーティーのリーダーね。名前を教えてくれないかしら?
 
カズマ:名前!相手は魔王軍だ、ここは安全策を・・・。俺の名はミツルギ…ミツルギキョウヤだ。覚えておけ!
 
めぐみん:…この男、土壇場でヘタレましたよ。
 
シルビア:あなたが魔剣使いのミツルギ。こんな強力なパーティーに出くわすなんてね…。
 
カズマ:フッ…ここでお前を倒しえても、紅魔族の力を借りたみたいでスッキリしないな。
 
シルビア:感謝するわミツルギ、また会いましょう。その時こそ決着を…撤退!!
 
カズマ:んー、思わず言ってしまったが、偽名はまずかったかな。今度ミツルギにシュワシュワでも奢ってやろう。
 

 
その夜ーー鈴虫の鳴き声が響く中、里は眠りに包まれていたーー
 
めぐみん:んー…ん?

 
カズマ:おはよう。よく眠れたか?
 
めぐみん:ぎゃっ!?
 
カズマ:お・は・よ。
 
めぐみん:ど、どうして人の手を握っているんですか!?とうとう越えちゃいけない一線を越えちゃいましたか!?
 
カズマ:バーカ、寒くて思わず手を握っちゃったんだよ。そもそもこの状況はお前の母ちゃんのせいだからな?
 
みんなを眠らせて、この部屋に俺とお前を閉じ込めたんだぞ?好きでこんなことしてるわけじゃない。
 
めぐみん:そ、そうなのですか?いらぬ誤解をしてしまいました。ごめんなさい。
 
カズマ:お、おう。いいってことよ…。
 
カズマ&めぐみん:…。
 

 
素直に謝罪されたカズマは頬を赤らめる。寒さに身をよじる2人の間には甘酸っぱい空気が流れていたーー
 
魔王軍シルビアを追い返したその日の夜。部屋で2人きりになっためぐみんとカズマはいい雰囲気になっていたーー
 
カズマ:そろそろ俺にお礼の1つも言ってくれていいくらいだぞ?いつもお前らの尻ぬぐいばかりしてるんだし。 

 
めぐみん:お礼ですか…そうですね。
 
めぐみんは頬を赤らめカズマに向き直ると、その手を優しく両手で包み込む。
 
めぐみん:…あの時、アクセルの街で露頭に迷いかけていた、爆裂魔法しか使えない手のかかる魔法使いを拾ってくれてありがとう。
 
魔法を使った後、いつも背負って帰ってくれてありがとう。迷惑をかけているのに、パーティーに残らせてくれてありがとう。
 
カズマ:…。
 
めぐみん:…お礼を言っただけですよ?自分でお礼を言えと言っておいて、何を照れているんですか?
 
カズマ:お、おう…まあ俺もなんだかんだ言いながら、お前らにも助けられてるからな。お前ら風に言うとーー
 
我が名は佐藤和真。アクセル随一の最弱職にして厄介事ばかり巻き込まれる者!
 
やがて大金を手にし…お前らとおもしろおかしく暮らす予定の者!…こ、今後ともよろしく頼むよ。
 
めぐみん:ふふっ…こちらこそ、今後ともよろしくです。
 
カズマ&めぐみん:ハハハハハ…。
 
カズマ:なんだかいい雰囲気だな。めぐみんもまんざらでもないのか?やっぱり、俺にモテ期が…!
 
放送:『魔王軍襲来!魔王軍襲来!既に魔王軍の一部が里の内部に侵入した模様!』
 
カズマ:おらぁぁぁぁぁぁ!!

 
シルビア:ひぃぃ!?
 
カズマ:いいとこで邪魔しやがって、お前なんだコラ!何時だと思ってやがる人様の迷惑考えろ!しばき回されてーのか!!
 
シルビア:ご、ごめんなさ…って違う!まさかここであなたに見つかるとはね…!!
 
カズマ:シルビアだったか。美女だからって手加減してもらえると思うなよっ!?
 

 
勢いよく斬りかかるが、カズマの刀はシルビアに片手で制された。
 
シルビア:この程度…?ねえ、あなた、ミツルギじゃないわね…?
 
カズマ:…お、俺の名は佐藤和真だ。名前を知られたらお前らに指名手配とかされそーだと思ったからだ!
 
シルビア:あはははは、傑作ね…我が名はシルビア!強化モンスター開発局長にして、自らの体に合成と改造を繰り返してきた者!!
 
あなたのこと気に入ったわ…私と1つになりましょう?
 

 
そう言うとシルビアはカズマの背後から手を伸ばし。カズマの頭を胸に抱え込む。
 
アクア:カ、カズマ!
 
カズマ:この体勢、顔の横に胸が…!?最近の俺はどうしたんだろう。やっぱりモテ期の到来なのだろうか?それとも俺の唯一の取り柄である高い興奮値が…?
 
シルビア:ちょっとボウヤ、そんなに熱い息を吐きつけないで。体が火照っちゃうでしょ?
 
カズマ:ああどうしよう。後ろから羽交い締めにされてるから、シルビアが動くたびに顔に巨乳が当たって幸せが…。
 
めぐみん:カズマ!今助けます!

 
ダクネス:落ち着け、めぐみん!爆裂魔法では威力が強すぎてカズマごと吹き飛ぶぞ!
 
めぐみん:そんな…!
 
ダクネス:私が行こう、今助けてやるぞ!
 
カズマ:お構いなく。
 
アクア&めぐみん&ダクネス:え!?
 
カズマ:シルビアさんは俺のこと気に入ったってよ。けど、最近のお前らは俺に対して随分をおざなりな扱いしてくれちゃってるよな?
 
シルビア:ふふっ、素直ないい子ね。でもあんまりお嬢ちゃん達をいじめちゃダメよ?女心ってものをわかってあげないとね?
 
ダクネス:魔族のクセに随分と人間の女心がわかるものだな。
 
シルビア:だって私、半分は男ですもの。
 
カズマ:…今、なんて?
 
シルビア:あら、聞こえなかった?私、キメラだから。あなたの大好きなこの胸は後で合成してつけたの。
 
カズマ:…シ、シルビアさんシルビアさん。俺のケツにも何か当たってるんですが?
 
シルビア:当ててんのよ!!
 
カズマ:ひゃぁぁぁぁぁぁ~っ!?
 
カズマ:う、うーん…あれ、ここは…?

 
シルビア:ここは紅魔の里の地下格納庫よ。私の目的な古代の魔道兵器を探し出すことなの。
 
カズマ:ひっ…!
 
シルビア:ふふっ、もう何もしないわよ?私が探しているのはね…『魔術師殺し』。いかなる魔法も無効化する、紅魔族にとって『天敵』となる最悪の兵器…。
 
やっと隠し場所へ辿り着いたのに、この扉、結界破りが効かない。魔法的な封印じゃないわ、なんなのこれは!
 
シルビアが開こうとする扉の傍には、ゲーム機のコントローラーと日本語で『コマンド入力』と書かれた石碑が置かれていた。
 
カズマ:えっと…コマンド入力?
 
シルビア:あなた、この古代文字が読めるの!?
 
カズマ:いや、これは有名な裏技をパスワードとして入力しろってことじゃないかと…ってヤバい!
 
シルビア:ふふっあなたは私の想像以上の男だったみたいね…。
 
カズマ:く、腐っても冒険者だ!簡単に口を割ると思うなよ?
 
シルビア:口を割らせるに脅しや暴力だけじゃないのよ?私のテクニックはサキュバス並み、さあこの快楽にどこまで耐えられーー
 
カズマ:上上下下左右左右ホホホイホイホイ!!
 
カズマがコマンドを入力すると格納庫の扉が音を立てて開き、兵器へと続く階段が現れる。
 
シルビア:あなた、人としてそれでいいの?でも…これで兵器が手に入るわ。
 
カズマ:まずい!恐怖のあまりコマンドを入れてしまった…
 
めぐみん:カズマ!よかった!無事でしたか!

 
ダクネス:シルビアはどこに!?
 
アクア:ははーん、もしかして、カズマさんがどうにか倒しえてくれたり?
 
カズマ:ちょ、アクア、それフラグ…うわっ!な、何だ!?地響きがーー
 
シルビア:アハハハハハ!

 
ダクネス:あれは…シルビアか!貴様、その姿は…!?
 
シルビア:言ったでしょう、私はグロウキメラ!兵器だろうが何だろうが、体に取り込んで一体化する力を持っているの…!
 
我が名はシルビア!最強の力を手に入れたグロウキメラのシルビアよ!アハハハハ~~!!
 

 
伝説の『魔術師殺し』の力を手に入れたシルビアは、紅魔の里で暴れまわっていたーー
 
シルビア:今まで散々コケにしてくれたお返しだよ!!


 
ゴブリンA:シルビア様だ!シルビア様が『魔術師殺し』を手に入れなさったんだ!!
 
ゴブリン達:シールビア!シールビア!シールビア!シールビア!
 
族長:まさか封印を解かれるとは…お客人。せっかく里に来ていただいている時にこのような事になってすまない。
 
カズマ:すいませーん、僕なんです。封印解いたの…。

 
あるえ:里が…燃えていく…。
 
カズマ:う、心が痛い…な、なあ本当にどうにもなんないのか?
 
あるえ:魔術師殺しには隠された対抗手段が…ある!!
 
族長:実は古来より誰も解読出来ない石碑があるのだが…。
 
カズマ:あるのかよ!よし、ともかくその石碑へ行くぞ!
 
めぐみん:待って下さい。こめっこが心配です。そこへ行く前にこめっこをーー
 
ダクネス:いや、めぐみんはカズマ達をその石碑とやらへ案内するんだ。めぐみんの家族は私が守る…それが騎士の役割だろう?
 
めぐみん:…こめっこを頼みます。 アクア:ねえ、勝手に盛り上がってるけど、私は危ないことしたくないんですけど!私の仕事は安全な所からの支援なんですけど!?
 
カズマ:駄々をこねてないで一緒に来い!俺達パーティーなんだろ!?
 
ウィズ:もうすぐ着きますよ、バニルさん。私の知り合いの職人さんなら間違いありませんよ。

 
バニル:汝がそんなに自信たっぷりに言うと不安になるがな。
 
ウィズ:大丈夫ですよー。職人としての腕は確かなーー
 
バニル:む、この爆発音は…?
 
ウィズ:ほぇぇ~!?さ、里が燃えてるぅぅ~?
 
シルビア:『エンシェントディスペル』!!
 
族長:こ、これは…魔法封じの呪文!?
 
ゴブリンA:ヒャッハー!魔法が使えない紅魔族なんてちょろいもんだぜ!!
 
シルビア:最高だわ、この魔術師殺し!クククッ、紅魔族は自ら作った兵器によって滅びるがいい。これで…終わりよ!
 
あるえ:危ない!ふにふら!どどんこ!
 
ふにふら&どどんこ:きゃあぁぁ!!
 
???:『ライトオブセイバー』ッッッ!!!
 
シルビア:何っ!?
 
ゆんゆん:そこまでよ!魔王軍幹部シルビア!!

 
どどんこ:ゆんゆん!バカ、なんで!?
 
ゆんゆん:友達を…見捨てられないから…。
 
ふにふら:ゆんゆん…。
 
ゆんゆん:我が名はゆんゆん!アークウィザードにして上級魔法を操る者!紅魔族随一の魔法の使い手にして、やがてこの里の長となる者!!
 
里を破壊すると言うのなら、先に私を倒してみなさい!…あ、紅き瞳は決して邪悪を許しはしない!それが紅の宿命!
 
シルビア:可愛いわね。でもあなたみたいに本当に可愛くて若い子…嫌いなのよ。先に始末してあげようかしーー
 
カズマ:そこまでだシルビア!
 
シルビア:くっ…今度は何!?
 
カズマ:時間稼ぎありがとうな、ゆんゆん!シルビア!これはな、魔術師殺しを倒す為の兵器だ!
 
ちょけら:あれは、ウチの物干し竿…!!
 
カズマ:石碑に書いてあったことは紅魔族には秘密にしておこう。まさか、またあの博士が絡んでたとはな…。
 
魔術師殺しに対抗する兵器を残してくれたのはありがたいが、名前が『レールガン(仮)』って…ほんと何考えてんだか!
 
カズマ:シルビア、この戦い楽しかったぜ…サヨナラだ!『狙撃』っ!!
 

 
カズマがレールガン(物干し竿)の引き金を引くと…。ハスッという乾いた空気の音がした。
 
カズマ:おい、どうなってんだこれ!?壊れてるんじゃないのか!?
 
ダクネス:どれ、私に見せてみろ!こういった物は叩けば大抵動くようになるっ!
 
アクア:ちょっと!私が魔力補充したのにどういうこと!?
 
シルビア:ねえあなた達、どれだけ人をおちょくれば気が済むのかしら?もういいわ。魔術師殺しの力を見せてあげーー
 
???:ハハハハハ…真打ち登場!!
 
めぐみん:我が名はめぐみん!我は至高にして全能の支配者!その天なる力の高みより命ずる者なり!!我の爆裂魔法で、全てを灰塵と化してみせましょう!!

 

めぐみん:我が求めに応じ、その力を示せ…。『エクスプロージョン』ッッッ!!!

 
めぐみんが放った爆裂魔法はシルビアに向かう…ことはなく。カズマが持って来たレールガンへと吸い込まれた。
 
シルビア:…?
 
めぐみん:ふぁ!?
 
こめっこ:ねえ。物干し竿、何かピコピコしてるよ?
 
カズマ:そうか、さっき不発だったのは魔力がまだ足りてなかったからか!フルチャージ完了となれば…!
 
シルビア、俺の名前を覚えとけ!あの世に行ったら他の幹部達によろしくな!俺の名はサーー
 
こめっこ:どーん!
 
こめっこが引き金を引くと、凄まじいエネルギー波が銃口から放たれ、シルビアの腹に穴を空ける。
 
シルビア:…あ…あ、あ…あれ?アタ、アタシ…これで、終わり…?

こめっこ:我が名はこめっこ!紅魔族随一の魔性の妹!魔王幹部より強き者!

 
カズマ&アクア&ダクネス:んー…。
 
アクア:悲惨な戦いだったわ。私はもう2度と人を傷つけないと願うわ…。

 
カズマ:おい、本当にやめろよ。そういうフラグみたいなこと言うの。
 
???:うぅぅぅ…ああああああ!!
 
めぐみん:な、なんですかアレ!?
 
シルビア:ここで終わらせてなるものか…!私の人生を始める…その先に、行く!!


 
更なる異形として現れたシルビア。巨大化した身体の半身は、脈動するスライムが核となり、ディラハンの鎧に覆われていたーー
 
シルビア:危なく川のほとりで魂を持っていかれるところだったわ…!でも残念ね、私はグロウキメラのシルビア!この私をここまで追い詰めたあんた達は…絶対、潰す!!
 
カズマ:復活しやがった…ヤバイヤバイのわぁぁぁぁぁ!?!?
 
めぐみん:ちょ、カズマ!?私が魔力切れなのを忘れないで下さい!!
 
???:『カースドクリスタルプリズン』ッッッ!!!
 
カズマ達を飲み込もうとしたスライムの蝕手が、周囲もろとも一瞬で氷漬けにされるーー
 
ウィズ:カ、カズマさん!大丈夫ですか!?

 
カズマ:ウィズ!バニル!なんでここに!?
 
バニル:汝のアイデアを商品化せうる為、この里の職人に会いに来たのだが…ふむ、我が身可愛さで魔術師殺しの封印を解き放ったか。
 
カズマ:ふあっ!?
 
バニル:見通す悪魔に隠し事は出来ない。しかし里がなくなってしまっては商売も不成立…いやこれはコマッタ、コマッタ。
 
シルビア:ウィズにバニルですって!?
 
ウィズ:あ、お久しぶりですシルビアさ~ん。どうか1つ、ここは穏便にーー
 
シルビア:出来るかぁっ!この裏切り者共がぁっ!!
 
バニル:ふむ…魔王軍に私が生存していることが知られてしまうのは大変面倒だな。ポンコツ店主、ここは共闘といこう。
 
ウィズ&バニル:はあっ!!
 
シルビア:あはははは!効かないわ、その程度の攻撃じゃあね!!
 
ウィズ:魔法が効きません…。
 
バニル:ふむ、物理攻撃もたいして効かぬようだ。
 
カズマ:なんだよこの強さは…!反則じゃないか!くそっ何か弱点は…隙はないのか…?
 
隙…スキ…スキ…スキ…ス…キ…?ス・キ??モテ…期…!
 
ダクネス:カズマ?あいつを倒す作戦でも思いついたのか!?
 
カズマ:くっ…!しょーがぇーなぁーっ!みんな、聞いてくれ!
 
ダクネス:ハァァァァ!!



シルビア:くっ、どういうこと?攻撃が当たらなかったクルセイダーの動きが急によくなって…そう、バニルね!
 
アクア:ブレッシング、ブレッシング、ブレッシング、ブレッシング…。カズマさんとの付き合いも長いけど、ホント無茶するわね。
 
カズマ:ありったけ幸運値上げといてくれよ!なあに大丈夫さ、俺には女神がついてるんだろ?頼んだぜ、相棒!
 
アクア:…任せて!
 
ウィズ:私は、里の皆さんの魔力を集めて、めぐみんさんとゆんゆんさんにお届けすればいいんですね!
 
カズマ:ああ、ダクネスとバニルが時間を稼いでいる間に頼む!最後はあの2人に託したからな…さあて、ここからが本当の戦いだ!
 
シルビア:こんな頭のおかしい里でいたずらに時間を費やすのはここまでよ!!はあっ!!
 
ダクネス:ぐっ…ん!?
 
シルビア:私は魔王軍幹部として誇りを持って戦ってきた。だけど、私を慕ってくれるのは部下のゴブリン達だけ。
 
そこに『絆』はあっても、『愛』はない。死の淵で初めて気づいたの…私は狂おしいほどの恋がしたい!愛を手に入れなければ私の人生は輝かないのよ!!
 
カズマ:バカ野郎!!違うだろ…。
 
シルビア:…え?
 
カズマ:シルビア、お前は…出会った時から、輝いてただろ!!
 
シルビア:…!!私、こんなにストレートに怒られたの、初めて…スキ…。


カズマ:ス…キ…。
 
シルビア:大…。
 
カズマ:ス・キ☆
 

 
両手を広げたカズマは、シルビアの胸部分に取り込まれていくーー
 
カズマ:ディラハンの鎧とスライムの体を得たシルビアに、物理攻撃は決め手にならない。その上、元から魔法耐性まである…。
 
隙はない。だから…一か八か、俺自身があいつの隙…。弱点になる!!
 
シルビア:大スキィィィィィーー!!
 
カズマ:めぐみん、ゆんゆん!後は頼んだぞ!!
 
ウィズが紅魔族達から集めた魔力の奔流が、上空からめぐみんとゆんゆんに降り注ぐーー
 
めぐみん:…。
 
めぐみん:無茶です!こんな分の悪い危険な賭け…。私が、上級魔法さえ覚えていれば、他の手段も…!

 
ゆんゆん:めぐみん!カズマさんはめぐみんの爆裂魔法を信じてる…。そうじゃなきゃ、こんな作戦立てないよ。めぐみんはもう、爆裂魔法を信じてないの?
 
めぐみん:…!!2人で勝ちますよ、ゆんゆん!

 
ゆんゆん:我が名はゆんゆん!紅魔族随一にして『最高』の魔法使い!!

 
めぐみん:我が名はめぐみん!紅魔族随一にして『最強』の魔法使い!!
 
ゆんゆんがあの時、私に爆裂魔法への道を行かせてくれたから今日の私がいるのです!!
 
ゆんゆん:めぐみんがいてくれたから、ライバルとして今日まで来れた!!
 
ゆんゆん:ハァァァァァ~ッ!!『ライトオブセイバー』ッッッ!!!
 


めぐみん:吹けよ嵐!響けよ爆焔!!爆裂魔法はロマンなんです!どんな不可能も可能にする最強の魔法なんです…『エクスプロージョン』ッッッ!!!
 
爆裂魔法と光の刃がシルビアに迫る。しかし、シルビアの眼前に現れたバリアが直前で刃を押し返すーー
 
シルビア:そんな魔法では私の人生は奪えない…!行くのよ、私は先へ…未来へ!!
 
取り込まれたカズマ:今だ!俺が…あいつのスキ、弱点になる!!シルビア…俺と一緒に、逝こうぜっ☆
 
シルビア:カズマ…ス・キ…!
 
取り込まれたカズマ:ス・キ…!
 
めぐみん&ゆんゆん:ハァァァァ~!!
 
シルビアがカズマに気を取られた一瞬。めぐみんとゆんゆんが生み出す渾身の光の刃がシルビアを貫いた。
 
カズマ&シルビア:ギャアアアアアア~!!
 
シルビア:サトウカズマ…わ、私を弄んだのね…!?でもスキィィィィイ!!
 
取り込まれたカズマ:コレが俺の…モテ期だぁぁあああ~~~!!
 
俺のモテ期は終わった。
 

数日で復興出来るという紅魔の里を後にして、俺達はアクセルの街での生活に戻っていた。

 
カズマ:なんだ、めぐみん。いつもの爆裂散歩に連れ出されたのかと思えば…俺に上級魔法スキル取得のボタンを押してくれって?どういう風の吹き回しだ?
 
めぐみん:突然すみません…。これからは足手まといにならない魔法使いになります。私が扱いやすい上級魔法を取得していれば、カズマがシルビアに捕まることも、死ぬこともなかったはずなんです。
 
だから…『ロマン』は卒業です。爆裂魔法は封印するんです。
 
めぐみん:紅魔族随一の魔法の使い手!上級魔法を操る者!…今後はこれでいくとします。上級魔法が使えるようになれば、ゆんゆんよりも潜在魔力が高い私の方が絶対に紅魔族随一ですから!

 
カズマ:はぁ…アホだなぁ。
 
カズマがめぐみんの冒険者カードを操作すると、冒険者カードが僅かに光を放つ。
 
カズマ:ほらよ。
 
めぐみん:どうも…じゃあ、帰りますか。
 
カズマ:なあ、めぐみん。ちょっと一発撃ってくれよ。
 
めぐみん:はあ?何を言っているのです。
 
カズマ:だって今日は1日1爆裂、まだやってないだろ?
 
めぐみん:…いいでしょう!私の最後の爆裂魔法。それはもう凄いのをお見せしようではないですか!!
 
…さよなら…。『エクスプロージョン』ッッッッ!!!!
 
めぐみんが放った爆裂魔法は、これまでにないほどの衝撃で地面を揺るがし、青空にはもうもうと爆煙が立ち昇っていくーー
 
めぐみん:こ、これは…?
 
カズマ:爆裂魔法の威力向上、しといたぞ?
 
めぐみん:…カズマ!!
 
我が名はめぐみん!アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!アクセル随一の魔法使い手にして…。いつか爆裂魔法を極める者!!!
 
カズマカズマ、今日の爆裂魔法はーー
 
カズマ:120点!!

【公式】この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ(このファン)
この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ (@konosubafd) / Twitter


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