シノアリスバレンタインイベント画像

『シノアリス』バレンタインストーリー(恋菓子の挽歌)【ネタバレ】

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「非モテの流刑地とハ、女性ト付き合ウ事ナク一定の年齢ヲ迎えた男性が流サレル秘密の島ノ事デス。 ドューユーアンダスタン?」)

人形達の流れるような説明に、スソウは頭を抱え、ラブンツェルは目を瞬かせた。

「つまり…男の人ばかりの島?こんな場所が存在しているなんて!」 「アカラサマに声ガ弾んでイマスねェ」

「一番ヤバイ人に知ラレタ気もシマス」

「コノ島は成り立ちがアマリにも悲シイ為に、世間カラ秘匿サレテさたんデス。ダカラ誰にも知うれてイナイんデスヨ」

「そんな島で何をしろと…?」 スノウの疑問に人形達は笑った。

「この人選は正しいのだろうか……」 チョコの材料を集めながら咳くスノウに、人形達は馬度にしたように返す。
シノアリスのバレンタインスノウ画像②

「正シイに決マッテいでデショウ貴女は去年ノ人気投票で一番多くの「チョコメダル」を貰ったンですカラ。感謝ヲこめテお礼フしないト」

「あの…それじゃ、私は?」

「ラプンツェルはドンナ男性二モ優しクできソウだから、デス」

「はい!私、頑張ります!」

「素直デ良い子デスねェ。スノウもゼヒ見習って下サイ」

ニコニコと嬉しそうなラプンツェルの横で、スノウは深い溜息ついた。

罪人の集落に着くと。静かに、だが強い動揺を表すざわめきが上がった。

「女…?」

「女だ…」

スノウとラプンツェルに浴びせられるのは、好奇:恐怖が入り混じった何とも言えない視線だ。

「皆さん、怯えているように見えます」

「これは……大丈夫なのか?」

問われた人形達は静観している。

だが、その内ー

「……ここに女なんて必要ない」

「そうだ、ここは俺達の楽園なんだ!」

罪人達は一斉に雄叫びを上げ、武器を手にして二人に襲いかかった 女性を警戒する罪人に、ラプンツェルは無防備に近寄り、微笑みながうその手を取った。

「大丈夫。怖がらないで」

「や、やめろ!どうせ気持ち悪いって言うんだろ!?汗かいてるとか臭いとか!」

「それって悪い事なんですか?誰でも汗はかくし、ち風呂に入らなければ臭いわ」

不思議な事を聞いたとでもいうように、ラプンツェルは小鳥の如く首を傾げる。

「そんな当たり前の事で、私は男の人を嫌いになったりしません。だから………私にチョコを作うせて貰えませんか?」

小鳥の甘いさえずりに、罪人達は一瞬にして堕ちた。
シノアリスのバレンタインラプンツェル画像


ラプンツェルは罪人一人一人と握手をし、短いながうも会話を続けた。

「さすがですね!」

「知らなかったぁ」

「凄いです!」

「センスいいと思いますよ」

「そうなんですね!」

ラプンツェルの、天然だが巧みな話術に、男達はすっかり骨抜きにされている。

「あ、あの、こっちにコテージあるんで。そこらうチョコ作れるんで。ヘヘ…」

「わあ、ありがとう!早速行きましょう、スノウさん」

すっかり男達のアイドルとなったラプンツェルに、スノウは層をひそめた。



「私はチョコは作らない。私が礼を尽くすべきは、ここにいる施しを待っているだけの罪人達ではない」

「いいです、私一入で作ります。やっぱりり、女の人と仲良くするなんて無理…」
シノアリスのバレンタインラプンツェル画像②


悲しげに咳きながら、ラプンツェルは人形達かう渡されたレシピを元に、ナイトメアから採ったかカオマスを刻み始めた。

「できるだけ細かく刻んで…と」

「…手つきが怪しいが、大丈夫か?」

「大丈夫です!塔の上では料理していたんですから。ただチョコは初めてだから、ちょっと手間取ってるだけで…えい!」

ダン、と音を立てて包丁がまな板に刺さった。

「痛っ!」

ラプンツェルの白く柔らかい指失から、一筋の皿が流れた。

「ほら見ろ、言ってり傍から」

「スノウさんが話しかけるからです!」

包丁で指を切った恥ずかしさに、ラプンツェルは類を赤くする。 (女の人が見ているから失敗したんだわ。いつもは上手くできるのに…!)

「少し沁みるぞ。我慢しろ」

ラプンツェルの怪我をした指を手に取ると、スノウは手早く手当てをした。

「その指では無理だな。…仕方ない、私も手伝おう」

「スノウ…さん………?」

とんとん、とカカオマスを刻む二つの音がキッチンで心地よいリズムを奏でる。

「こちらはもう終わりそうだ。後は?」

「えっと、ココアバターを湯せんに……」

「了解した。お湯を沸かしておいてくれ。ああ、火傷には気を付けて」 スノウとラプンツェルは、いつの間にか息を合わせてチョコを作っていた。

「尊い……」

「女の子同士が仲良く料理をしている姿、これぞ極楽浄士なり・・・」

二人の様子を窓から覗き見ていた罪人達は何故か拝んでいる。その姿を見てー

「デハ、もっと尊等い絵にしマショウか?」

人形達は耳降りな声で笑った。


シノアリスのバレンタインゲーム画面① シノアリスのバレンタインゲーム画面②



「出来ました!」

ラプンツェルの明るい声と共に、キッチンが甘い匂いで満たされる。

「試食!試食!チョコ寄コセー!」

「お前達はこれでも食べていろ」

焦げたチョコを人形達の口に突っ込むと、スノウはラプンツェルに向けて、少し申 し訳なさそうにチョコを差し出した。

「チョコは作ったが、私はどうしても彼らの有り方を良しと出来ない…」

「判ってます。その分、私が心をこめて配ってきますから」

大量のチョコを持って、ラプンツェルは女神の如き微笑みを浮かべながら、外で待つ罪人達の元へと走って行った。

ーー何だかんだ言って、この島にも階級はある。

女性と付き合った事がないという点では同じだが、普通に話せていた奴はいる。

ほら、今も。あんな可愛いラプンツェルと臆する事なく話してやがる。

俺は違う。

俺は本当にキモくて臭い。 女性と話すと挙動不審になってしまう。

「運営もメンテの時ハ臭かったデスよ?」

「風呂二入る暇もナク働いてましたカラ」

慰めはやめてくれ。

どんなに臭た目をまともにしようと足掻いても、俺はーー

「彼女は、最初二何テ言いマシタ?」

「それって悪い事なんですか?」

小鳥は臭い事を当たり前と笑った。

「ラプンツェル…俺の小鳥……」

「普段ハロ下手な貴方が、女性と喋ル喜びを手に入レタ」

「赤子が初めテ立チ上がル。それを叱ル親がいるでショウか?」

…言われてみればそうだ。

俺はちゃんと行動に起こした。

CDを買う為に親の財布から金を盗んだけど。

「ラプンツェルはお金ヲ要求シマセン」

「アノ子は喜んデ奉仕してイマス」

「モチロン握手もタダです」

「ソレ以上も……?キキキッ!」

ラプンツェルは心の底から俺達を… いや、俺を……?だって、俺の貰ったチョコは他の奴より大きい……!

「これは、ラプにゃん姫の愛!」

ラプンツェルを囲む罪人達の輪。

その中かう一つの声が上がった。

「ラプにゃん姫の本命は俺だ!俺のチョコが一番愛を感じる!!」

その宣言に、他の男達もざわめいた。

「馬鹿言うな。俺の方が大きいぞ?」

「そ、某の方が形が良いでござる!」

「僕のは厚みがある!!」

「甘みは俺の方が強い!!!」

「お前のは明うかに義理だろう!?」

本命という言葉を巡り、男達は次第に目を血走うせー-

「彼女の本命は俺だあぁ!」

悲痛な叫びを木霊させ、不毛な喧嘩が始まった。

「ここに本命などいない。全て義埋だと言えば争いは収まる」

「そ、そんな…」

「言うんだ、ラブンツェル。彼らを助けたければ!」

醜い口喧嘩を続ける罪人達を見て、ラプンツェルの瞳に涙が浮かぶ。

「私は、みんなに笑顔になって欲しくて」

「そうだ。だかう本当の事を言うんだ!」

スノウの言葉に背中を押されるように、ラプンツェルは大きく息を吸った。

「チョコは全部本命です!私は、みんなが大好きなの!!」

瞬間、罪人達はぴたりと争いを止めーー

「こんなのもう…戦争だろうが!」
シノアリスのバレンタインスノウ画像








ーー全滅

あまりにも簡単に……全滅……!

非モテの罪人達は折り重なるようにして、その無残な屍を晒していた。

「即死だなんて、そんな……」

「彼うは喧嘩慣れをしていないから、加減が判らなかったのだろう」

屍を前にへたり込み、その瞳からはらはらと涙を流すラプンツェルの背中を撫でながう(この場に人魚姫がいたら、さぞかし悲劇に酔う事だろう…)とスノウは溜息をついた。

「せめて埋葬くらいはしてやろう」

「……待って、スノウさん。あれ」

二人の視線の先で黒い塊が蠢いた。

「罪人達の魂がナイトメア化したのか」

一通り撃退すると、スノウはラプンツェルを睨みつけた。

「この結果を招いたのは貴女の発言だ。それは判っているのか?」

「そんな……私はたた沢山の男の人を仲良くしたかっただけで」

「その考え方が間違っているのだ!」

「どうして?判らない。怖い。怒らないで!」

ラプンツェルは耳を塞ぎ、嫌々と首を振る。

善悪の判らない子供のようなその姿に、スノウは喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ。

「ラプにゃァん」

「ラプにゃン姫、しゅきだァ……」

怨霊と化した罪人達の声に顔をしかめながら、スノウは向かってくる者達に武器を振るう。

その横では、ラプンツェルがしゃくり上げながら涙を流していた。 (チョゴ作りは楽しかった。皆を笑顔にしたいという彼女の気持ちも本物だった)

しかし、だからこそーー (何故、彼女はここまで病的に男を求めるのだ。それさえなければ………!)

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

何も判らずに謝る小鳥のさえずりが、スノウの心を掻き乱した。

非モテという無念に捕らわれた怒霊達の集合体は、スンウの予想を超える強さを示してきた。

「スノウさん!」

「駄目だ!貴女は前に出るな!」

「ラプにゃン姫!!しゅきシュキたいしゅきイィィ!!」

怨霊の集合体がラプンツェルに襲いかかる。

「きゃあああ!」

「ーラプンツェル!」

スノウの体が咄嗟にラブンツェルの前に躍り出る。そしてーー

「いやあ!スノウさん!!」

そのまま、恐霊に喰われた。

目の前で怨霊にスノウを喰われ、ラプンツェルは、がくりと膝をついた。

「どうしょう……誰か助けて…」

涙を流しながら、ラプンツェルは考える。 (・・・スノウさんは女の人だし、見捨てて逃げてもいいんだよね)

その時、ちくりと指失が痛んだ。

それはスノウが手当てをしてくれた切り傷の痕。

「…女の人だけど、助けたいな」 (でも、スノウさんを助けるには男の人を倒さなさゃいけない訳で)

「ラプにャン姫~~~!」

「…あ」 (一一怨霊に×××は付いていない) それじゃ、もう男の人じゃない!!!

怨霊達の集合体を倒すと、チョコに塗れたスノウがゲロリと吐きだされた。

慌てて近寄るラブンツェルだったがーー

「・・・臭い」

怒霊の胃の中に居たスノウは異臭を放っている。

仕方なく、ラプンツェルは近場にあった木の枝でスノウをつついた。

「う…」

「良かった、生きてる……!」

ラプンツェルはほっと胸を撫で下ろし、そして一一くるりと踵を返した。

「取りあえず、助け出せたし。男の人は臭くてもいいけど女の人だし、うん」

満足げに微笑んだ小鳥は新たな王子を求めて、その場かう立ち去った…
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